【伊藤幸弘の子育てアドバイス】#43 家庭内暴力の敏幸に対する、伊藤の接し方

2015-11-05

おはようございます。
伊藤 幸弘です。

本日も子育ての悩みから、
ひきこもりや非行など、子供の問題行動に
悩む親御さんに役立つ情報をお伝えします。
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前回のおさらい
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数回にわたり、敏幸という男の子の
実話をお伝えしています。

敏幸は母親と2人暮らしでしたが
家庭内暴力を起こしていました。

そして、家庭内暴力がエスカレートし、
ついには母親以外、
叔父さんの息子を殴ってしまいました。

それを見た母親は卒倒してしまいます。

そして、ノイローゼと診断された母親は
入院を余儀なくされました。

しかし、その後も敏幸の
問題行動は止まりません。

母親が入院した翌日、
なんと敏幸はバイクを盗み
逮捕されてしまいます。

その際、これまで何かと世話を焼いていた叔父も
ついに限界を感じたようで、

「伊藤さんのところで敏幸の面倒を
見てやってくれないでしょうか?」

と依頼を受けました。

そして僕のところで
敏幸の面倒をみることになりました。

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本日のテーマ
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鑑別所に面会に行った僕の顔を見ると
敏幸は真っ先に
「すみません」と頭を下げました。

母親にしてきたことを
深く反省している様子でした。

鑑別所に入り、孤独な時間の中で
これまでの親と自分のことを
思い返しているようでした。

鑑別所に入った子は幼児の頃を思い返し、
親との思い出をなぞり、そして反省します。

どんな子も、たどる道です。

「中学を卒業したらどうするつもりだ」

と尋ねると

「まだ考えていません」

と彼は答えました。

ゆっくり考えるようにと言って
出所後は自分が面倒をみることを伝えると
敏幸は

「よろしくお願いします」

と再度頭を下げ

「伊藤さんの言う通り天罰がくだりました。
もうこりごりです」

と言い残して部屋へ戻って行きました。

1週間後、敏幸は出所しました。

鑑別所の中で考え、
敏幸は調理師になることを決心しました。

僕の家で暮らし、
調理師の学校に通うことになりました。

敏幸にとっては心を入れ替えての
再出発になるはずでしたが・・・

しかし、わがまま放題で
暴力をぶつけていた子どもが
そう一朝一夕に変われるものではありません。

新しい生活が始まって
1週間も経たないうちに
敏幸は叔父に電話を入れて

「調理師なんかになるつもりはないんだ。
勢いで言っただけだ。
もう地元に帰りたいよ。
叔父さんから伊藤さんに
俺を帰してくれるように言ってくれ」

と言い出したのです。

それを聞いた僕は顔を真っ赤にして
彼を怒りました。

「何を勘違いしているんだ。
お前には帰るところはないんだよ。
与えられた場所で
自分の決めたことをやるしかない。
ここで逃げたらまた鑑別所や
少年院に逆戻りなんだ。
頑張るしかないんだ!」

青ざめた顔をして敏幸は聞いていました。

しかし、その後もワガママが出ました。
叔父さんに電話をしては

「あれを送ってくれ」

と要求することが何度もありました。

その度に僕は真剣に、
そして自尊心を傷つけないように
気をつけながら敏幸を怒り続けました。

何回目だったか、怒る僕を前に
敏幸が倒れてしまったことがありました。

今まで一度も
人から真剣に怒られたことがなかった彼は
本物の怒りに何度も触れ
とうとう貧血を起こしてしまったのです。

そうやって時に怒りながらも、
遊びを通じて社会のルールを学んでもらいたいと
休みの日には釣りやボウリング、
遊園地に連れ出すなどして1年が過ぎました。

そして、調理師免許を取るまでもう少しという時、
敏幸は突然

「僕は調理師には向かないと思う。
演劇の仕事がしたい」

と言い出しました。

僕はじっくり話を聞いてやりました。

話し合いをしました。

その結果、調理師学校をやめて
演劇の方へ方向転換するのが良いと判断し、
知り合いの劇団に頼んで
敏幸を入れてもらうことにしました。

それから3年が経ちました。

敏幸は今も劇団で頑張っています。

母親は退院はしたものの
まだ完治はしていません。

「敏幸をこんなにしたのは私だ」

と悔いて
息子との関係を修復しようと考えてくれているが、
暴力への怯えは消え去っていないようです。

敏幸のほうも将来母親と暮らすことを望んでいます。

母親に会って

「ごめんなさいと言いたい」

ということも話しています。

子どもが乳幼児期に
体験すべきことを体験していないと、
成長してからどこかの段階で、
親は乳児幼児期からの「育て直し」を
しなくてはいけなくなります。

思春期の家庭内暴力も実際のところは
「育て直し」の一端なのです。

敏幸が僕の家で体験したことは
すべて彼が乳幼児の時期に
経験しておかなければならないことでした。

彼にとっては多少
遠回りとなりましたが、
それでもその間の経験は
マイナスに見えることも
失敗としか映らないことも、
長い人生において
いつかプラスとなってくれるに違いありません。

敏幸の人生はまだこれからです。

その将来に何があるかは分かりません。
でも自立に向かって
歩み出していることだけは確かです。

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編集後記
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家庭内暴力、はっきり言って
その解決はそう容易ではありません。

これまで、たまりにたまった
愛情不足が爆発した結果です。

その問題の根が深ければ深いほど
解決は困難を極めます。

敏幸の場合は、親と離れることになり
それが功を奏し解決に繋がりました。

僕が敏幸と対峙することは
簡単なことではありませんでした。

主張に一貫性は無く
精神状態は常に不安定でした。

“もう一度、一から子育てをやり直す”

僕はそんな感覚で敏幸と向き合いました。

そして、徐々に距離を縮めました。

調理師免許を取るまでもう少しという時、
敏幸は突然

「僕は調理師には向かないと思う。
演劇の仕事がしたい」

と言い出しましたが
もしあなたが
お子さんにそんなことを言われたら
何と言いますか?

調理師免許を取るまでに費やしてきた
時間や費用、それらが全て
無駄になってしまうとしたら・・・

こういう場面で、もしかしたら

「決めたことは最後まで貫き通しなさい」

と言う方が多いかもしれません。

しかし僕は敏幸の主張を受け入れました。

それが正しい子育て、
つまり過保護な子育てだと考えるからです。

もしかしたら調理師免許を取得することが
敏幸にとっての幸せだったのかもしれません。
しかし、そうではない可能性もあるのです。

未来のことは誰にも分かりません。

誰にも分からないことを、
親が押し付けることは
親のおごりでしかありません。

敏幸が決めた道を黙って温かく見守ってやる、
でも、もしつまづいた時は
しっかりサポートして準備はしておく、
それこそが正しい子育てだと思うのです。

多くの親御さんは

ここの高校に入って欲しい
いい大学に行ってほしい
一流会社で働いて欲しい
こんな職業について欲しい

と「それが子どもの為」と思って
親の希望を押し付けがちです。

そのためには

早いうちから勉強をさせなきゃ

と考え、小さい頃から
子どもが望まない塾に通わせたり、
習い事をさせたりします。

お子さんの意思が無い状態で
そういったことをすると、
少しずつ親子関係に亀裂が入り始めます。

そして、不登校、ひきこもり、
最悪の場合、家庭内暴力といった
問題行動が発生するのです。

どうかお子さんの意思や希望を
尊重することを忘れないでくださいね。

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読者の方から頂いた子育ての成果
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さて、本日も読者の方から頂いた子育ての成果を
紹介させていただきます。

息子さんの不登校に悩みDVDを購入された
NKさんからのメッセージです。

*******************ここから********************

小6の息子の不登校に悩み、
インターネットでいろいろ調べました。

伊藤先生のHPが、共感・納得できる内容だったので、
すぐにDVDを購入しました。

小6の息子が不登校になった要因が
家庭環境にあることは分かっていました。

それでも、自分の考え方が合っているのか、
何が間違えているのか、
どのように接したら良いか
等が分からずにいました。

そのころは、笑顔でいながらも、
胸が押し潰されるような気持ちの毎日でした。

DVDを見て、今までの子育てを振り返り、
思い当たることも多くありました。

子どもへの接し方のアドバイスによって
長いトンネルの遠い先に小さな光が見えたような、
明るい気持ちになれました。

実践から3か月が経ち、息子との会話が増え、
息子も自分の気持ちを言えるようになりました。

その分、息子が抱えている思いの奥深さを実感し、
まだまだ先は長いような気もします。

父や兄、姉達との関わりも、
時に息子を後戻りさせてしまいます。

もともと持っている発達障害の
「こだわり」の傾向が強まるなど、
イメージ通りに改善はしませんが、
メルマガに励まされながら、
焦らず子供たちと向き合っていきたいと思います。

*******************ここまで********************
NKさんへ
メッセージを頂きまして
本当にありがとうございます。

少しずつでも改善されているということで
本当に嬉しく思います。

胸が押し潰されるような気持ちの毎日、
その苦しさ、お察しします。

>イメージ通りに改善はしませんが、

とありましたが、一朝一夕には改善せず
落ち込まれることもあるかもしれません。

それでも、どうか気を落とさずに
過保護な子育てを続けてくださいね。

>息子との会話が増え、
>息子も自分の気持ちを言えるようになりました

これは素晴らしい変化です。

自分の気持ちを言えるようになる
そして、親にその思いを伝えられる

それは親子の信頼関係ができた証拠です。

そして、信頼関係ができれば、
同じような過ちは起こさずに済みます。

すでにNKさんご自身が
子育てに光を見出されているのであれば
必ずゴールにたどり着きます。

どっしり構えて子育てをしてください。

改めまして素晴らしいメッセージの
シェアをありがとうございます。

僕もこれからも引き続き
このメルマガを通じて応援させていただきます。
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長年にわたりできてしまった
親子関係の溝が深ければ深いほど、
溝が埋め立てられるまでの時間は
長くかかるものです。

ときには焦ってしまい、
ついつい感情的になり、
言うつもりのなかったことを言ってしまうことも
あるかもしれません。

親も人間ですから、それも当然です。

物事は全て完璧になんか進みません。

一歩進んで、二歩下がる時もあると思います。

でも、正しい子育てをしていれば
必ずゴールにはたどり着きます。

そう信じて今日も温かい心で
お子さんと接してください。

さて、次回は

“自立”

をテーマにお伝えいたします。

どうしたら子供は自立するのか?

というお話です。

親離れさせて一人でなんでもさせれば良いのでしょうか?

実はそれは大きな間違いです。

あなたの子育てにおいて
必ず必要な知識ですので
ぜひ次回もご期待ください。

それでは、本日も最後まで
お読みいただきまして
ありがとうございました。



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